マンションに長く快適に暮らしていくために、様々な修繕・改修が必要になっていきますが、国や自治体による補助金や助成金の制度を賢く利用することが出来れば良いですよね。
マンション管理組合の皆様とお話していると、意外とご存じないこともあり、改めてご紹介させていただこうと思います。是非最後までお読みいただければと思います。
補助金や助成金は、早めに準備しないと制度が終了してしまったり、予算上限に達して早めに受付終了になったりと、残念なことになる場合があります。管理組合で動くとなると、検討を始めてから実際に申し込むまで時間がかかることもありますので、より早めに検討することが求められます。
今回は、様々な制度からいくつかピックアップしてご紹介します。
目次
1.助成金活用でクリア! 放置すると後で大変な『アスベスト含有調査』
アスベストとは? いつ禁止された?
アスベストとは、天然に算出する繊維状鉱物で、下記の種類があります。
- 蛇紋石系石綿 / クリソタイル(白石綿)
- 角せん石系石綿 / クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト
- トレモライト、アクチノライト
アスベストは安価で入手でき、耐火性、断熱性、防音性、絶縁性などの多様な機能を有しているため、建築材料として大量に使用されてきた歴史があります。平成17年以前の建物には、アスベストを含む材料が使われているケースが少なくありません。
しかし、アスベストに含まれる成分が人体にとって非常に有害な物質を含んでいること、髪の毛の5,000分の1程度という非常に微細な繊維が空気中に浮遊して、人間の呼吸によって肺に吸い込まれやすいことから、肺がんや悪性中皮腫などの健康被害を引き起こすことが社会問題にもなり、ついに2006(平成18)年9月1日からアスベストの使用は全面禁止となりました。ただし、それまでアスベストを使用して建設された建物については、除去工事を義務化するわけにいかず、助成を行って対策を講じてもらうようにしているのが現状です。
ヨーロッパでは1972年頃から禁止が始まり、80年代には多くの国で全面禁止となりましたが、日本では判断が甘く、対応が10~20年遅れたことにも触れておきます。
助成内容は、お住まいの地域によってこんなに変わる!
アスベスト調査に対する助成金は、各市区町村で条件が様々です。東京都の3区を例に2021年度の要項で比較します。
- 江東区/ 調査費用の1/2(上限5万円)、工事費への助成は無し
- 千代田区/調査員派遣(無料)もしくは調査費(上限25万円)、共用部分の除去工事費(上限100万円/棟)
- 新宿区/ 調査費用の10/10(上限25万円)、工事費の2/3(上限300万円)
※建築基準法の違反が無い建築物
自治体によって内容は様々ですが、調査費用のみの場合と、工事費用まで対象の場合があるようです。
調査はどんな内容なの?
概ね1棟当たり2か所で塗料を採取することが多いのですが、複数種類の塗料が使われていると、2か所×複数の採取が必要になったり、建物の条件によっては3か所以上での採取になったりと、そう単純ではありません。
含まれていた場合はどうなる? 大規模修繕工事が着工できない?!
2006年9月に禁止されるまで、外壁の塗料や下地調整剤にアスベストが含まれていることが多いのですが、外壁のメンテナンスといえば、大規模修繕工事であり、アスベストが含まれていた場合は、その飛散リスクに応じて、必要な対策や改修方法が変わってきます。
今は、大規模修繕工事を実施するためにはアスベストの含有有無の結果が必要です。調査の有無とその結果によって工事費に影響することはもちろんですし、調査をしていないと大規模修繕工事が着工できません。
そして、当然ですが費用も変わります。アスベストが含まれていない場合と比較して、3割以上アップすることも少なくありません。
さらに、ここで終わりではなく、アスベストが含まれていた場合は、それを見越して長期修繕計画の見直しも必要となります。何もしないで放置しておくと、後になってお金が足りなくて、どうにもできなくなってしまいます。
2006年以前に建てられたマンションにお住まいで、アスベスト調査をしたことが無いのであれば、助成金を活用して、アスベスト調査を行うことをお勧めします。
翔設計では、調査~工事~計画見直しまで、全面的にお手伝いいたします! お気軽にご相談ください!
※こちらの大規模修繕工事コンサルティングページも是非ご覧ください
2.『マンション劣化診断調査』は助成金活用で!~管理計画認定制度・マンション管理適正評価制度~」
建物の劣化診断とは?
建物の劣化診断とは、経年に伴い劣化していく建物に対し、良好な状態で維持管理し、資産価値の維持向上を図り、長く快適に暮らしていくことを目的に行うもので、建物の健康診断と言える大切な調査です。
劣化診断調査についても自治体の助成制度があります。東京都の3区を例に2021年度の要項で比較します。
- 文京区/ 調査費の1/2(上限50万円)
- 台東区/ 調査費の1/3(上限96万円)※建物調査・給排水調査の合計で、戸数によって変動
- 千代田区/調査費用の1/2(上限50万円)、診断後に長期修繕計画の作成・見直しを行った場合にかかる
費用の1/2(上限80万円)、簡易耐震診断費用の1/2(上限20万円)
こちらも自治体によって内容が異なりますが、調査対象の違いや、診断後の対策費用まで対象の場合があるようです。
管理計画認定制度がスタート!
2022年4月から始まる「管理計画認定制度・マンション管理適正評価制度」においても、この調査診断が大きく影響します。
●管理計画認定制度(国)の主な審査項目
- 管理組合の運営状況
- 管理規約
- 管理費と修繕積立金を分けて経理しているか
- 長期修繕計画の内容、見直し状況 など
●マンション管理適正評価制度(マンション管理業協会)
- 管理組合の体制
- 管理組合の収支(財務)状況
- 建築・設備の法定点検の実施状況
- 災害時の対策 など
少子高齢化が進む日本で、空き家が問題となってきています。マンションにおいては、老朽化しても建替えが進まない問題もあり、適切なメンテナンスにより性能を維持向上していくことが、より重要な時代になっていきます。是非、このタイミングでマンションのこれからについて、改めて見直してみましょう。翔設計では、簡易メニューと詳細メニューをご用意しています。戸数や規模によってお見積り内容が変わりますので、無料お見積りをご利用ください!
自治体の助成活用や、調査メニューのアレンジも承ります!
※調査メニューはこちらをご覧ください
3.区分所有者が勝手にできない『断熱性向上のためのサッシ交換』を助成金活用で実現!
サッシの性能向上
玄関扉とサッシは、外壁と比べて熱を通しやすく、外気の影響を受けやすい部分になります。快適な住環境には、断熱性能が大きく影響しますので、特にサッシの性能向上が求められますが、玄関扉もサッシも共用部分に当たりますので、各区分所有者の判断だけでは交換できず、管理組合による対応が求められます。
各区分所有者が行える工事としては、既存サッシの内側にもう一つサッシを追加して2重サッシ化する方法があります。最近は工法も進化していて、圧迫感も少なく設置できるようになりました。
サッシ交換の助成金
この断熱性向上を目的としたサッシの性能向上についても助成があります。
下記は東京都の助成内容ですが、全国的に各自治体で同様の助成があるようです。
- 東京都/家庭における熱の有効利用促進事業
簡単に言えば、高断熱窓・ドアの設置費用の1/3が助成されます。また、補正予算の確定に伴い、令和4年は令和3年と比べて上限額が倍増されました。
- 窓・ガラス/1住戸当たり上限50万円⇒100万円
- ドア/1住戸当たり上限8万円⇒16万円
※詳細は東京都ホームページをご参照ください
国交省の大型助成事業も
更に、国交省による『長期優良住宅化リフォーム推進事業』という助成制度もあり、経年の進んだマンションにお住まいの皆様にとっては、追い風が吹いていると言えます。
国交省には他にも『マンションストック長寿命化等モデル事業』という大型助成制度もあります。
4.まとめ~早め早めの準備が重要!
今回は一部の補助金・助成金制度についてご紹介しましたが、いずれも予算が決まっている事業なので、申込が多ければすぐに終わってしまいます。新たな制度が始まったり、助成費が向上したりと、マンションのこれからを見直して、上手に助成制度を活用しながら、必要な性能向上を行っていくには、良い時期だと思います。
翔設計は、マンションに関する様々な課題解決を行うことができます。補助金や助成金の活用を含め、今お住まいのマンションでは、どのような施策が考えられるかなど、お気軽にご相談ください!
長期修繕計画でお悩みの方はこちらをご覧下さい
分譲マンションの長期修繕計画はそのマンションの管理体制の状態を示す指標の1つです。分譲マンションに住むうえで、快適に住めるかどうかを決める重要な要素の1つです。
長期修繕計画にどのような工事をどこまで組み込むか、またきちんと現地を確認し工事時期や概算工事費を定め、できるだけブレのない計画を作成することが重要となります。是非詳細をご覧下さい。