長期修繕計画見直し
長期修繕計画とは、マンションやビルなどの建物の維持・管理のために、今後の修繕作業の内容、費用やスケジュールを決めた物です。大規模修繕を中心とした長期修繕計画を立て、適切な時期に必要な修繕を実施することで、大規模な故障や劣化を防ぎ、建物の価値や住みやすさを保てます。
計画には、修繕の優先順位、工事での支出が計算された収支計画、予算管理などが含まれ、住民やオーナーの合意形成が不可欠。分譲マンションの長期修繕計画はそのマンションの管理体制の状態を示す指標の1つあり、住むうえで、快適に住めるかどうかを決める重要な要素の1つです。
翔設計では、建物総合コンサルタントの幅広い対応範囲を元に、みなさまにとって最良の計画作成をサポートしています。
翔設計の長期修繕計画作成の特徴
1.マンションごとにカスタマイズ
マンションによって立地や規模、使用している部材、耐用年数や劣化状況も異なるため、それぞれのマンションの特徴を把握し、修繕周期の設定や、必要に応じて工事項目の追加等を行います。
長期修繕計画作成時には、建物調査診断を行い、劣化状況を見極めて修繕周期を設定します。また工事の合理性を追求し、同時に行う方が合理的である場合は同時に行う計画にするなど、マンション毎に計画を立てます。
2.現実的な計画・実現できる計画
翔設計の長期修繕計画は、しっかりと現地を把握し現実的な計画をご提示します。修繕周期を変えるだけ、工事単価を変えるだけの机上の計画ではなく、マンションの状況を踏まえ、築年数や仕様に応じて修繕周期や工事費を算出しているので、現実に則した長期修繕計画となります。
3.組合の要望を汲んで作成
長期修繕計画の中にどこまでの工事を組み込むかは管理組合ごとに異なります。多くのマンションでは改良改善工事の費用が入っていないことが多くありますが、実際にはエントランスのリニューアルや、サッシ・玄関扉の更新等はどこかのタイミングで必要となります。
その費用が計画に入っていなければ、当然収支のバランスが崩れ赤字になる可能性が高くなります。どこまでの計画を見込んで計画を立てるかは各管理組合様と相談のうえ決定していきます。
長期修繕計画でおさえておくべきポイント
Point1 : 長期修繕計画は5年に1度見直すもの
まず重要なポイントは「国土交通省の長期修繕計画ガイドラインでは5年に1度見直すことが推奨されている」ことです。
なぜなら、計画と現実は当然差が出てくるうえに、時代と共に物価も変動していくため、定期的な見直しをしていかないと現実にそぐわない計画になってしまいます。
ここ数年で修繕積立金不足マンションが問題視されています。
そして今後、高経年マンションが急増します。
従って長期修繕計画の位置づけはより重要なものとなり、適切な計画を立てているマンションとそうでないマンションとの差は大きくなります。以下のグラフをご覧下さい。Point
Point2 :修繕積立金が足りなくなる3大原因
国土交通省の調べでは、約35%のマンションで修繕積立金が不足していると言われています。しかし実際にはさらに多い割合で不足していることが想像されます。
修繕積立金が不足する「3大原因」とは?
1.新築時の修繕積立金金額が低く設定されていて、その後値上げをしていない
マンションは新築時にはできるだけ低額で販売をするために修繕積立金は安く設定されており、その後段階的に値上げをすることを前提に作られています。しかし実際には定期的な値上げを実行しているマンションは多くありません。また工事費は大雑把に計上されていることがあります。
2.当初の計画には設備改修工事や改良工事が入っていない
新築時の向こう30年の計画には2回目の大規模修繕工事までが見込まれておりますが、築25年~30年以降に発生する給排水設備改修工事や、時代的劣化をリニューアルするための改良工事等が見込まれていないケースが多くあります。
当初の収支計画は黒字であったマンションも第1回目の大規模修繕工事を終えたあとの見直しにより、築30年以降の必要工事を見込むと、収支計画上赤字となってしまうマンションをよく見かけます。
3.物価の上昇は見込まれていない
30年先の工事費や人件費等の物価上昇率は誰にもわからないため、長期修繕計画を作成する段階では物価上昇は見込まれていない場合もあります。その場合、当初の概算工事費と実際の工事金額に乖離が生まれ、想定よりも支出が多くなり赤字となってしまう可能性があります。
Point3 : 修繕積立金が足りないとどうなるかを知っておく
大規模修繕工事は建物の躯体を守るために12~15年に一度実施します。この工事が適切に行われないと、建物は老朽化しボロボロになります。そうすると、今後ただでさえ人口が減少する中で、老朽化が進んだマンションを購入したい人はいないため、空き室の増加を促すことに繋がる。その結果、さらに修繕積立金が集まらなくなり、残された所有者で建物を維持していく必要があり負担が大きくなります。そして、最終的にはスラム化・廃墟化の道をたどります。
Point4 : ただ直すだけではなく改良・改善工事が必要
国交省は、大規模修繕工事で2つのことを行うように提唱しています。
一つ目は「修繕」です。
劣化が進まないように、劣化しているところを直して、できるだけ当初の性能に近づけられるようにすること(例:タイル目地のコーキングを打ち直す、防水塗料を塗り直す等)や、劣化がなるべく進まないようにすること(外壁タイルのひび割れ、浮きなどを直し、内側のコンクリートを雨水等から守ること等)が該当します。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
もう一つは「改良」です。
時代と共に上がる水準に対応していくために、設備のグレードアップやエントランスの改修を行ったり、新しい機能を付加したりすることになります。
国交省ではこの「修繕」と「改良」の両方を行うよう提唱しており、それを「改修」と呼んでいます。
しかしながら、現実は「修繕」しか行っていないマンションが非常に多いのです。それはなぜでしょうか?それは、「改良」が長期修繕計画に入っていないため、改良の為の資金が無いからです。みなさまのマンションではどうでしょうか?
Point5 : 激増するライバルの中で勝ち抜く必要がある時代です
全国で築40年超のマンション戸数は、2020年末時点で103万戸ですが、10年後(2030年)には2倍超の232万戸、20年後(2040年)には約4倍の405万戸と、かなりのペースで増えていきます。
これは、中古マンションの取引において、ライバルが増え続けることを意味しています。長寿命のマンションだからこそ、次の世代に残せる資産として、その資産価値を向上していくことが必要です。
時代が求めるマンションの水準も上がっていきます。今の新築マンションには、非接触オートロックやディスポーザー、床暖房や複層ガラスサッシはもはや標準レベルです。中古マンションも、時代に合わせて改良改善を行わなければ、時代に取り残されたものになってしまいます。
ライバルが多い中で、もし不人気物件になってしまったら、居住者は減り、最終的にはスラム化へ進むリスクが高くなります。そうならない為には、「修繕」だけでなく「改良」が必要なのです。
Point6 : 新築デベロッパーと管理会社による金額設定は適切か?
新築マンションはデベロッパーと呼ばれる開発会社が販売価格を決めて分譲します。その際、管理会社が決められており、その管理会社が管理費と修繕積立金を決めていきます。
マンション購入者は、ローン支払いに加えて管理費や修繕積立金、駐車場代等を含めた金額を住居費として返済計画を立てていきますので、管理費や修繕積立金があまり高いと、売れにくくなってしまうことを恐れ、新築時は低く設定する傾向が強いのです。
また、修繕積立金を段階値上げ制とすることで、当初の金額を低く見せる手法があり、このように設定されている物件も少なくないのが現実です。
必要最低限もしくはそれ以下の内容となっている計画に基づいた資金計画では、将来の改修費用はカバーされておらず、少しでも予定外の費用がかかればすぐに赤字になってしまう恐れもあります。
皆で少しずつ積み立てるお金ですから、少しでも早く見直すことで大きな負担とならず計画を上方修正していくことが可能です。
適切な長期修繕計画を作成することが重要
長期修繕計画の見直しは、工事計画と資金計画がセット
適切な長期修繕計画のもと、必要な修繕工事をきちんと行っているマンションこそ、時代に取り残されず選ばれ続けるマンションとなります。
長期修繕計画の見直しは、工事計画と資金計画がセットとなります。見直しにあたり、様々な項目について採択を検討するわけですが、立ちはだかるのはおカネです。
少しでも合理的な工事計画を立て、できるだけ工事費を圧縮していくことに加え、必要に応じて修繕積立金の値上げも同時に検討していかなくてはなりません。
翔設計では複数パターンのシミュレーションを元に伴走支援
翔設計では、2~3パターンの値上げシュミレーションを作成し、それをもとに管理組合様の方でどのパターンで進めていくかを決定頂きます。
また修繕工事に加え、改良改善工事を組み込むことで資産価値向上と快適な暮らしを実現することができます。将来必要になるであろう工事が見込まれていない場合や、時期をずらすだけの見直しでは無意味な計画になるだけです。
長期修繕計画にどのような工事をどこまで組み込むか、またきちんと現地を確認し工事時期や概算工事費を定め、できるだけブレのない計画を作成することが重要となります。